2011年11月5日土曜日

入試に「情報科」を(後編)

前回、いろいろとコメントをいただきまして、結論を早く書かねばと思っておりました。

先週は入試科目に情報科をとりいれることに対し、学習の活性化の意味での必要性を中心に、大学で必要あることについても述べました。今週は、大学での必要性についてもう少し述べていきます。そのあと、こんな問題を出してはどうか、という例を示そうと思います。

大学での必要性について、前回も取り上げたプログラミングの観点から話をしてみます。ソフトバンククリエイティブが発行していた(る?)「プログラミングスタートガイドブック」とかなんとかいうフリーペーパーで、「猫でもわかる」シリーズの粂井氏が書かれていたことに、多くが凝縮されていると思います。どのような内容かといいますと
・これから車の免許を取るため教習所に通おうというのに、ブレーキやアクセルが何かわからない、というようなことはまずないし、またそんな状況はまずいだろう。
・同様に、これからプログラミングを学ぼうというのに、メモリやコンソールやファイルが何か分からない、というような状況はあるべきでないし、まずい状況である。
・しかし、実際にプログラミングを学ぼうという人で、先に書いた状況の人は意外と多く見受けられる。
というものです。前回あげたYahoo!知恵袋の例はまさしくこれなのではないかと思います。また、プログラミングに苦戦しているという声を少なからず聞きますが、これもまた、その人々がプログラミングに向いていないとかセンスがないとかそういうのではなく、ブレーキやアクセルに当たる、メモリやファイルという概念を知らないことに起因すると思います。その状況でいきなり大学でプログラミングを学ぶから、苦戦しているのだと思います。

これらのアクセルやブレーキについて教えるのが高校の「情報」の内容ではないかと思います。あるいは、ネチケットやセキュリティについてもここで扱うことだと思います。これらについて学び、また、これらについて前もって確認しておけば、大学での情報科学教育もよりやりやすくなるでしょうし、「システム管理者の眠れない夜」に見られるような事例も少しぐらい減るのではないかと思います。

現状、パソコンがそれなりにできる人は、結構特異な目で見られ、また、パソコンなら何でもできると思われがちです。たとえば私は、プログラミングやLinuxの簡単な整備などはできますが、画像や音楽、動画の処理についてはそれほど長じているとはいえません。前者は「趣味としてやっています」という程度ですが、後者は「一般人並みの知識か、それに毛が生えた程度です」というのが正確です。ところが、これらを区別なく聞かれることが多いのが現状です。その場で調べたりして何とかかんとか乗り切っていますが、これらも、基本的な「ヘルプを読む力」「いろいろ検索する力」があれば、いちいち聞く必要がなくなります。これらの力を身につければ、パソコンがそれなりにできる人が特異に見られることも減ると思いますし、本当に必要な時にだけパソコンの知識を教えればいいようになるのではないかと思います。それを学ぶのが高校の情報という科目ではないかと思いますから、大学、社会等での必要性を考えても、やはり情報を入試科目にするのは良いことであるように思います。

最後に、ごく簡単な、センター試験ではこれぐらいのレベルの問題を出せばいいのではないかという例を出します(出題形式は違いますが)。「確かにこれらに正解できないなら、パソコンの活用やプログラミングの学習に支障が出るかもな」と思っていただければ幸甚です。

1.次の4つが入力装置・出力装置・主記憶装置・補助記憶装置のいずれであるか答えなさい。
A.メモリ B.ハードディスク C.ディスプレイ D.デジタルカメラ

2.ある回線で、720MBのデータをダウンロードするのに6分を要した。この回線の下りの実測速度の平均値は何Mbpsか答えなさい。

3.メールを送る際、CCとBCCはどう違うか説明しなさい。

4.暗号化はどのようなところで使われているか答えなさい。

5.不可逆圧縮の例を挙げなさい。

どれも基本であると思いますが、センター試験なら、これぐらいの問題を出すとよいのではないか、また、これらに正解できる程度の学習をすればいいのではないかと思っています。


まとめておきます。
1.情報科に関して現状の教育指導要領に対する問題を論ずるつもりはない。
2.現状の教育指導要領の内容は大学以降で情報科学を必要とする人にとって基礎となりうる内容を含んでいるが、高校で教えられておらず(指導要領が十分に守られているといい難い)、大学入試でも問われないためにこの部分が欠落して困ってしまう学生がいる。
3.以上の是正の一策として、情報処理学会は大学入試センターに入試科目としての情報科の新設を要求した。この扱いは選択等でもよいので、必要な者に情報科を入試科目として科せる状況になればよいと思う。
4.これらにより、高校の情報科の授業においても教育指導要領の内容が守られるようになり、受験生が学ぶようになって高大の接続が円滑化されるのではないかと考える。以上から、私は情報処理学会の行った「センター試験科目としての情報新設要求請願」に肯定的である。

3 件のコメント:

Volcanologue さんのコメント...

貴君の例題を見ると,なんだか体系立った学問と言うよりも,単なる知識の詰め込みを狙ったという感じがして否定的です.特に2に関して言うと私も解ける気がしない(笑).誤り訂正をどれだけの割合で送受信するのかに依存すると思うのですよね.ほかはともかくとして.

linux で pwd とうって何が起こるのかわからないようなのは,そもそも素養がないのがと思って,私は捨て置きますがね.そうも言っていられないのでしょうか.

達哉ん/Tatuyan さんのコメント...

>Volcanologue さん
ありがとうございます。
センター試験、他もだいたい知識の詰め込みという印象があるので、合わせてみましたがどうなのでしょうか。実際はもっと考える問題を出して欲しいとは思いますが、センター試験の現状を考える限り、厳しいと思います。東北大学だったか、センター試験と二次の得点に相関がないことを示していましたので、二次試験にするならもっと考える問題を出すべきと思います。

あ、2については誤り訂正etcは無視するということでやったほうがいいですね。

捨て置くのは一つの手ですけど、「入試に情報とかないから勉強していない」->「大学に入って情報が必要!でも全然わからない!」->捨て置かれて落第とかというのは、入試が入試として機能していない気がしてしまいます。入試ではそこに入学してやっていけるかどうかを見ないといけませんから、この状況は不味いように思います。なので、情報もその科目として取り入れることで、その目的をより達成できるようになるのではないでしょうか。

Volcanologue さんのコメント...

母数に比べて「主記憶,なにそれ」と言っているのはきわめてわずかだと思います.それ故捨て置くという発想になった訳で.コンピュータの構造なんて基本的なものは,90分も講義されれば,後は自学自習でどうにかなると思っているので.ならないのは,そもそも大学で勉強すると言うことの素養がないんじゃないでしょうか.