2012年2月23日木曜日

「寒いね」と話しかければ...

木曜日ですが、「欅通りの人びと」の続きを書いている暇がないので、別の話…。

俵万智の句に

「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人の いるあたたかさ
(サラダ記念日)

というものがあります。寒いとあたたかいの対比があって、その温かさが強調される云々という鑑賞文が書けそうです。

この句、多分、文学的な視点からは「寒いね」がいいのでしょう。
俵万智さんもずいぶん苦心して選んだことだろうと思います。

でも私は、「寒いね」に代表しながらも、より多くの言葉をここに入れられるという点で、この句が好きです。
表現等の観点からは「寒いね」が良いのでしょう。ただ、誰もが後ろに感じ取るであろう「同意する人のいる温かさ」という主題が、本当に大切なものだと思うのです。

楽しいね、でもいい。
辛いね、でもいい。
嬉しいね、でもいい。
さみしいね、でもいい。
他にも、美味しいね、落ち着くね、悲しいね、苦しいね...無限に多くの言葉が入りうると思うのです。

何か言ったときに、同意してくれる人がいるということ。それだけで、日々はずいぶんかわります。変わり者であるという時、同意してくれる人は自ずと減ってくるから、なおのことその温かさを大切にせねばならないと思います。

来月、忙しくてプログラミングを離れていた友人が戻ってきて、再び楽しむことができる予定です。
来月、1年半ぐらい間を空けての、Wagner神戸大会で、万年筆仲間と楽しみます。
来月、親しい友人たちと、小旅行に行って骨休めをするつもりです。
他にもたくさん、自分が同意してもらえる人のいる環境に、来月行くことが出来ます。

今、ちょっとしんどい。特に、SNSなんかで、嘗ての友人が楽しくやっているのを見ると、「自分は今…」と比較して、しんどく感じてしまう。話題に入ろうとして、でも何か感覚が違うような、ズレが見えてきてしまう。

そんな折に、この句を思い出して、もう一日がんばろう、って思えます。
相手が、ふっと何か、感情を漏らした時、それを分かち合えるようにありたい。意見ではなく、感情に。今楽しい、今しんどい、今さみしい、今落ち着いた...そういう、ほんのひとときの感情を受け入れて同意することの大切さを、この句から学びます。

私の大好きな「帰省」の一節と、同じような励ましを得られる句に、今日も励まされて、しんどいながらもう一息です。

束の間 人を信じたら もう半年頑張れる

同意してくれることで、束の間、人を信じられるのではないでしょうか。

0 件のコメント: