2011年9月10日土曜日

書評:「コンビニたそがれ堂 〜星に願いを〜」

今回は全3編の短編〜中編物語集です。
次回作、「竜宮ホテル」も期待しております、村山早紀氏の「コンビニたそがれ堂」シリーズの第3巻です。

前作のビターチョコレート路線が引き継がれている作品です。日常の風景の中に、少々の空想を加えたような物語です。

前作までで固まってきたコンビニたそがれ堂の設定が引き継がれており、その設定を活かして書いている部分が多いように思います。特に2話目「喫茶店コスモス」でしょうか。1巻の段階よりもコンビニたそがれ堂の像がずいぶんはっきりとしてきており、そのはっきりした像をバックボーンに物語を紡いでいるように感じます。

私がこの作品に読み取ったテーマは「男女の愛の結末」です。1話目と3話目では失恋とその後の話が、2話目では結婚してずっと後、死別が描かれているからです。それらの中に人間の好ましい部分と、それを見つめる神様の微笑みが描かれており、ハートウォーミングな作品です。

Amazonではこの路線の継承に反対である旨のレビューがありましたが、1から2巻のあいだにスイートチョコレートからビターチョコレートへの路線転換が行われていますから、まだ飽きるというのは言いすぎでしょう。路線転換というのは引き継がれる路線の中でマイナーチェンジとして行われるものであると思います。いきなりの直角カーブを曲がるのではなく、クロソイドカーブをたどるように、じわじわとなめらかに変えていくのが最もとっつきやすい。私の大好きな、内海隆一郎氏の「人びとシリーズ」もそんな感じです。

Twitterなどの小道具が現代の感じを出して、現代の日常に僅かな空想を、そんな感のする作品です。良い作品ですが、Twitterなどに馴染みのない人には、少々取っ付きにくい気がする部分もあるかも知れません。現代的な道具を用いている小説であるため、昔からの日常よりは馴染みが薄い人が多いこと、致し方ありません。あくまでも小道具ですが、それが嫌だという人もいることでしょうから。

作家レベルで一番好きなのは、多分内海隆一郎氏です。しかし、内海氏はご高齢で、私よりも50歳も年上です。そう考えますと、比較的近い将来、内海氏の小説が増えなくなったときに、名乗りを上げる、そのひとりが村山早紀氏ではないかと期待しています。

ちなみに村山氏は猫好きのようです。作品にも多くの猫が登場します。私も猫が好きですので、ここはポイントが高いところです。

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