万年筆布教論で、万年筆をどのようなタイミングで布教するべきかということについてです。
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万年筆の販売店の選び方がわかったところで、そこに連れていく機会はいつが良いか、というのが本節の主題である。一本の、自分のパートナーを選んでもらうのが販売店での購入であり、万年筆布教論の目指す布教の目標と言っていい。その論理から言うならば、各々がパートナーとして耐えうる一本を選べば、そこで布教は終わりであり、以降、さまざまに万年筆を買うのは同じ愛好家として話しながら手伝えばよいのである。そのことを踏まえ、ここでは、「1本買わせる」にいたるまでを説明する。
まず、万年筆に興味を持ってもらうため、試供品として何かを渡すのが良い。舶来の、学童用練習万年筆やカジュアル万年筆といった類の万年筆、もしくは手持ちで使っていないものや、パイロットやセーラー、プラチナなどで1万円未満の比較的安価なものを何かの折に渡すのが良いだろう。理由なく渡すのは相手にも訝しく思われるだろうし、自分自身も渡しづらい。クリスマス、誕生日等何かの理由をつけて渡すのが良いだろう。私の場合は相手の記念事や世間の記念ごとの他、ある集まりで行ったゲーム大会の賞品として使った。このように、何かにかこつけて万年筆を渡すのがまず始まりである。これにより興味を持ってもらうのである。
この時に渡す万年筆は基本的に最高のものとはならない。人によって書きぐせが違うのだし好みも違うのだから、こちらが勝手に選んだ万年筆が相手にとって最高の一品となることはまずないと言っていいだろう。ここがポイントで、悪くはないが、まだ一つ物足りない、という感覚を大抵の人は受けるはずである。そこで、もっと良いものを欲するときがあり、そここそが万年筆購入の機会である。相手の書きぐせなどを見極めつつ、自分の知りうる限りの情報を用いて、相手に合う一本を目指す。アフターサービスは全て自分を介して可能、と言えるぐらいの知識を以て万年筆をすすめる。その時の相手の状況、自分の知識で最も相手が長く使えそうなものを、相手の希望を出来る限り聞いた上ですすめる。
気を引くための一本目は出会いである。そして、自分で初めて買う一本目は、その出会いの意義をより深く理解するためのものである。一本目は決して釣り餌ではない。万年筆を筆記具として認めてもらい、それを日常に使ってもらおうという気を持ってもらうことが必要である。その上で、さらに上質なものを探してもらえるようなものを渡さねばならない。ラミーのサファリやペリカーノジュニア、あるいはシュナイダーベースキッズやパイロットプレラなどはそれに調度良いペンである。ペンとしての味がありながら、次を見させてくれるペンである。
まず一本を渡し、気長にまち、相手が上質のものを求めたときに、それを勧められる態勢。それこそが万年筆布教の機会を見つける方法であり、布教者は絶対に相手に逆らってはならないのである。教えではなく、協力。そのスタンスで機会を見つけることが布教者にとって重要である。
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少し短い上、主張も少ないですが、実は要点です。ここを逃してしまうと、布教は厳しくなります。
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