2011年6月1日水曜日

紅茶の裏の真心

今回の内容は美味しんぼ66巻「究極の紅茶」に対するアンチテーゼです。
賞味期限・消費期限の切れた食べ物・飲み物というのは大変に申し訳ない。せっかく食べられるものを作ってもらっているのに、それをいただけないというのは、きっと作り手も悲しむことだろうと思います。

ここでは紅茶を扱いますが、美味しんぼの「食べ物の真の法律は真心である」という意見を、飲み物にも適用したいと思います。その真心とは、供給する側ではなく、食べる側、飲む側の真心です。真心を前提にした議論ですので、真心など関係ないという方には単なる耳汚しになるかもしれません。

先に出した美味しんぼという漫画は、事実も書いていますが、作者の意見が入りすぎているきらいがあります。非常に顕著な例として、殆ど全般に渡りマトンを臭いものだとして扱っていますが、マトンの需要が少なからずある現状には合わない意見であり、また、素晴らしく美味しいマトンがあることも事実なので、これについては視野の狭い意見であると考えられます。

この美味しんぼの66巻「究極の紅茶」では、CTC製法あるいはBOPすら知らない「紅茶の知識がある」主人公達が究極の紅茶を探し求めます。この段階でおかしい。CTC,BOPなどは紅茶の啓蒙書を一冊読めばまず確実に書いています。手許に4冊ほど紅茶の本があったので調べてみましたが、すべての本に書いてありました。

次いで、「ブレンドにおけるダストは悪い」とする発言もいただけません。ダストは水色をつけますし、味もありますので、ブレンドにダストを使う事自体が悪いとは言えません。

この話でケッサクなのは最後です。主人公達が見つける究極の紅茶はダージリンFTGFOPです。要するに高いのを選んだだけです。色々と書いていますが、その理由も紅茶のことを知らない人が書いたとしか思えません。というのは「チップが多いから一芯一葉のFTGFOP」という意味の発言が多いことです。これについては磯淵猛氏が「ティータイムのその前に」の中で「ゴールデン・チップだけを取り出していれてみても、色もつかないし、香りもないし、美味しいわけがない」と書いています。

この話には続編がありますが、そちらでは上記のようなことには言及せず、「これまでのセイロンティーは飲みにくいものが多かったが、新しいのができた」という内容でした。それについては当該紅茶を試したことがないので、コメントは差し控えます。

ここまでの紅茶の話では、基礎知識のない人が高い紅茶を挙げて、それを美味しいといっただけということを挙げました。その中で何よりも気になったのは、ダストを混ぜたティーバッグの紅茶を低く見ているところです。

ティーバッグの紅茶は入れ方という観点から見ても、美味しい物に出会うことはまれです。が、世のティーバッグには「リーフティーと同じ中身を単にティーバッグにしただけの物」も数多くあり、それらは当然美味しいものです。入れ方の点で劣るものの、葉として特段劣るものを使っているわけでもないのに、それをまずいとして一段低く見るのは如何なものでしょうか。これ、ティーバッグを作っている人々の真心のことを無視した意見ではないですか?

磯淵猛氏は「紅茶にも心が大切だ」と言っていました。それは多くの人間の真心からなると思います。好みはともあれ、少なくとも「真心が大切」と言っている連載が、ティーバッグの実情も知らずに紅茶のことを高々と書いているのは、真心に反しないのだろうかと思いました。

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