呼び水のペンの段階から購入にいたるまでに布教者が使用方法として教えるべきことについて簡易にまとめます。布教者の知識は十全たるものと云う前提です。
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呼び水のペンあるいは第1本の購入時に、勿論万年筆の使用法としてインクの入れ方や書き方(近年はペン芯を紙側に向けるということを知らない人も多い)を説明するだろうが、これに加えて手入れのことを説明する必要がある。これはどの程度説明するべきかというのが本章での主たる話題である。使用する上で必ず教えるべきことは店員も説明するはずなので、それ以外に何を加えるべきかというのが布教者に求められる。
万年筆は手入れが重要であるが、大抵の説明書等に書かれている通り、毎日欠かさずの使用が非常に良い手入れとなることは疑いない。このことをまず第1に強調したい。これは、万年筆そのものの手入れになるばかりでなく、万年筆の良さを知る契機の提供ともなるためである。毎日使え、というのは陳腐な話であるが、布教論においても(布教論以外でもそうだろうが)重要である。万年筆を入手したとき「大事に使う」というコメントを残す人は少なくないが、このコメントには十分注目して欲しい。大事に使う、というとき、「ここぞというときに使う」という意味としてしまう人が多い。万年筆はそれにふさわしいと思われる場面で、という考えであろう。だが、一般の人にとって、万年筆にふさわしいという場面はさして多くない。公文書に万年筆は使えないというような意見の人すら存在する現在において、万年筆にふさわしい書く機会というのは筆まめでなければ得られないと言って過言でない。そこで、大事に使うというのは場面に応じて使うということではなく、ペンそのものを大事にしつつも各場面において使える限りは存分に使うことである、という認識に改めておいたほうが良い。初心者、一本目の方が「ありがとう、大事に使います」とコメントをくれたとき、私は必ず「大事に、というより、存分に末永く使ってあげてください」と返すことにしている。ともあれ、毎日使うこと、機会ある毎に使うことは強調してしすぎることはない。
それ以上に手入れ・入門にあたって教えることは個人対応で十分であると思う。多くを教えても憶え切れないというのもある。まずは毎日使ってもらうこととし、「いつでも質問があれば」という体制を整える方が購入時に多くを教えるよりよほど良い。強いて教えるとすれば、別のインクに変えるときや数カ月使った時には水洗いして欲しい、ということを言っておく程度である。それとて必ずしも言うべきというわけではなく、普段連絡がつきにくいような場合には話しておいても良い、程度のものである。連絡がつく状況ならば無闇に与える情報を増やすことに利はない。それを話すぐらいであれば、ひとまずは毎日使うことを十分に強調し、後は布教者や販売店のアフターサポートに任せてしまえばいいのである(布教者のアフターサポート論については後述する)。
使用にあたって必要なことと、最低限の注意点(ex.キャップを閉めておくこと、キャップを尻軸に付ける場合のクリップの向き等)を紹介し、後はただ使うことを強調する。それにより少ない情報を確実に伝えられ、結果として万年筆のハードルを下げてくれるのである。
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書いていることはいいのですが、「毎日使うこと」は多く持っている人ほど困難なもの。そんな場合は「使わなかった例として…」と反面教師もまた面白いかもしれません。
2 件のコメント:
はじめまして。
”ペン芯を紙側に向ける”とはどのような状態のことですか?また、”キャップを尻軸につける場合のクリップの向き”に決まりがあるとは知りませんでした。
よかったら、おしえてください。
浮舟 さん
はじめまして。達哉んです。
ペン芯を紙側に向ける、というのは万年筆の筆記の際に、金属部(ニブ)が見える側で書く、ということです。万年筆のペン先に穴が開いている場合(ハート穴といいます)、これが自分に見えるように書きます。反対側の黒い物(これがペン芯です)を自分の側に向けて書くのは「裏書」といい、通常の書き方ではありません。
http://www.pilot.co.jp/library/002/index.html
に動画つきで解説があります。ここでは「ペン先は刻印のある面を表に」という言い方をしていますが、同じことです。
キャップを尻軸に付ける場合のクリップの向きに「こうしなければかけない」という決まりはありませんが、重心を安定させるために、ペン先と同じ側にクリップを持ってくることが推奨されます。ペン先に対してクリップが横に向いていると、少しペンをひねりがちになり、結果、書き味を悪く感じたりすることもあります。
言葉での解説でしたが、どうでしたでしょうか?実際には、先に紹介した動画が分かりやすいと思いますので、よかったらご覧ください。
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