2011年11月16日水曜日

書評:「なつかしの高校国語」

今回は「ちくま学芸文庫」よりこちら


「なつかしの高校国語」、比較的最近の本です。

随分と分厚い文庫本で、ブックカバーをつけるのにも一苦労する、とんでもない本です。値も張りますが、その価値ありの内容です。学校の先生が使っている指導資料をそのまま文庫本にしたものなので、解釈などについていろいろな意見があり、深く読むことができるように思います。この本により、「山月記」や「舞姫」といった名作について、高校の時に扱ったであろう読みよりもさらにいろいろな読みを自分で確立できると思います。小説を楽しむのはもちろん、自分なりの読みを提示し、それについて議論するのもずいぶんおもしろいことのように思います。私の周囲にはこういった文学を嗜んで読みを提示するような友人がいないので、自分にとっては夢物語ですが。

この本はいわば、文学に対し読みを確立・提示する本です。その性格は、指導資料ですから当然の性格なのですが、これを現在文庫で入手して読めるということに価値があるのだと思います。文学作品を楽しもうと思う人に一度読んでみてもらいたい本です。自分の読みを磨き、多くの本を楽しむ道へと誘ってくれると思います。

また、高校の頃の授業を思い出しながら読むという方法もあると思います。この場合は、解説よりも本文中心に味わうことになるでしょうが、ややもすれば詳しすぎる、過多ともいえる解説を真面目に読むのは、なかなかしんどいものがあります。真面目に読むときには解説も読んで、肩ひじ張らずに読みたいときは本文を中心に読めばいいのだと思います。

一つだけ、残念だったことがあります。タイトルでは「国語」なのですが、古典が一切扱われていないのは至極残念です。有名作品は文庫でも手に入るのですが、少しマイナーな説話集などは教科書以外では手に入りにくいのが現状なので、宇治拾遺物語や醒酔笑なども扱ってもらったらよかったのにな、と思います。

※ ちなみに、私は宇治拾遺物語の文庫版を持っていますが、現代語訳なし・旧字で、まず「読めない」次いで「分からない」という困った状況です。


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