2013年10月11日金曜日

男女を問わぬ愛を〜中島みゆきの歌詞の解釈(20)

1年半以上ご無沙汰していたシリーズを、久しぶりに書いてみようかと思います。

中島みゆきは、自分の歌詞の解釈を聞き手に任せます。それは、私にとって嬉しいことであり、私もその精神に則って、自分なりの解釈をしていこうと思います。

解釈は人によっても異なりますが、時によって異なり、心によって異なり、状況によって異なるものであると思います。同じ曲を複数回出すこともあるかも知れませんが、それは状況や時が変えたということと考えてください。

今回は、中島みゆきが歌詞を提供し、"宇宙戦艦ヤマト2199"のEDテーマにもなった「愛詞」です。歌詞はこちら


「ありふれた男と ありふれた女が 群像の中で 突然の中で 特別な人になる」
最初は、男と女の話から始まります。男と女が恋中になった、という事でしょうか。しかし、その解釈は、次の言葉で唐突に迷います。

「傷ついた昨日も 傷ついた未来も 諦めの中で 突然の中で 意味のある日になる」
人間の人生に無駄はないという、教訓を言い当てた言葉は、しかし、先の解釈とは相容れず、迷子になってしまったような気分になります。

そしてまた、舞台は戻ったかのように「逢いたくて」「触れたくて」と続きます。逢いたくてと触れたくてが両立するならば、やはり恋仲の男女の話であろうとなります。

その次に、もう一度の転換があって今度は
「傷ついたあなたへ 傷ついた命へ」
あなたはわかるかもしれないけれど、命。自分の恋人を、命と表現するだろうか。まして、傷ついた命、と。

この、次々に変わる2つの支点を共にくくるかのように、サビが来ます。
「わかる人にしかわからない それでいい愛詞」
男女の仲は、当人同士にしかわからないから、その中でかわされる言葉は、当然わかる人にしかわからない。その一方で、何らかの愛情を込めた言葉というのは、多くの場合わかってもらえないものであり、思いが伝わるほど稀なことも少ないわけで、そんな時に送る愛を込めた言葉もまた、わかる人にしかわからない愛詞と言えます。

そして二番。
「風の強い夜です 手をつないでください」
「貴方が微笑んでいてくれるように 泣かずにいるように」
これは、確かに男女の中でも言える言葉だけれど、決してそれだけの言葉ではありません。別に、子供が親に使ったり、逆に親が子供に使ってもいい、そんな言葉です。それを裏付けるかのように「伝えたくて」「せつなくて」など、決して恋仲だけにとらわれない言葉が続き、「こごえてるあなた」「こごえてる命」と、恋人の表現としてはおよそ不適当な言葉が後を追います。
その後、二番は「心の扉の鍵になれ ひと粒愛詞」と終わります。

私は、この歌を、愛になぞらえながら、しかしもっと大きな愛を歌った、「誕生」と同じような歌ではないかと感じました。
手紙を書きます。相手に届く手紙は、相手の心に届けと思って書きます。多くの場合、それは愛情といわれる感情の所作でしょう。しかし、心の扉の鍵になれと願って書いた手紙は、残念ながら、わかる人にしかわからない。私はそのわかる人のことを、友と呼んだり恋人と呼んだりするわけですが、愛詞というのは、そのことを表しているのではないかと、そう思うのです。

言葉を届けても、それが伝わらない人がいます。相手のことを思って書いた手紙を突き返されたときは、その人とはおそらく付き合えないだろうと感じました(実際、付き合えた例はありません)。おそらく、私の愛詞はわからない、わかろうとしないという人なのでしょう。そんな人と付き合わなくとも、わかってくれる人がいて、その人と仲良くすればいい。その意味で「わかる人にしかわからない 愛詞」なのです。

普遍的な愛の中にある愛詞を言いながら、しかし男女の仲も書いたというような、そんな曲だと思います。

※ この解釈は、あくまで私の一解釈であり、正しい・誤りであるというのを書くものではありません。一つの見方として受け取っていただければ幸いです。

※ 扱って欲しい曲がありましたら、コメントでお書きください。

※ 他の解釈が載っているサイト、もしくは自分なりの解釈がありましたら、コメントでお書きください。

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